リスクを価値に変えるERM

ERMの継続的運用と改善:企業価値向上に資するリスク管理体制の維持・進化

Tags: ERM, 継続的改善, リスク管理, 企業価値向上, 経営企画

ERMは構築で終わりではない:継続的運用と改善の重要性

全社的リスク管理(ERM)は、企業の持続的な成長と企業価値向上に不可欠な経営基盤として広く認識されています。多くの企業がERM体制の構築に取り組み、一定の成果を上げていますが、ERMが真に「活きた経営ツール」として機能し続けるためには、その導入・構築段階で終わりではなく、継続的な運用と絶え間ない改善が求められます。

経営環境は常に変化しており、新たなリスクが出現したり、既存のリスクの性質が変化したりします。また、組織そのものも成長し、戦略やビジネスモデルも進化していきます。このような変化に対し、ERM体制が静的なままであれば、やがて現状との乖離が生じ、形骸化のリスクが高まります。ERMを企業価値向上に継続的に貢献させるためには、変化に追随し、さらに proactively に対応できるような、動的で進化し続ける仕組みとして運用していく視点が不可欠です。

なぜERMの継続的運用・改善が必要なのか

ERMの継続的な運用と改善がなぜ重要なのか、その理由をより深く掘り下げてみましょう。

  1. 経営環境の絶え間ない変化への適応: 地政学的なリスク、技術革新、法規制の変更、市場の変動など、企業を取り巻く環境は常に不確実性に満ちています。ERMを継続的に運用することで、これらの変化に伴う新たなリスクを早期に特定し、評価・対応することが可能になります。
  2. 組織の成熟度向上: ERMの運用を通じて、組織全体のリスクに対する意識や能力は徐々に向上します。この成熟度に合わせてERMのプロセスやツールを改善することで、より洗練された効果的なリスク管理が可能になります。
  3. 経営戦略との同期維持: 経営戦略は市場や競合状況に応じて見直されます。ERMの運用を継続的に行い、経営戦略との連動性を維持することで、リスク管理が戦略実行の障壁となることを防ぎ、むしろ戦略達成を支援する強力なツールとなります。
  4. リスク文化の定着・深化: ERMの継続的な活動は、組織全体にリスクを意識し、議論し、適切に対応するという文化を浸透させます。単なるルールとしてではなく、従業員一人ひとりがリスクを自分事として捉えるようになるためには、日々の運用を通じた働きかけが重要です。
  5. ERMの実効性・価値貢献の最大化: 運用を通じて得られるフィードバックや効果測定の結果は、ERMプロセスのボトルネックや改善点を明らかにし、その実効性を高めるための貴重な情報となります。これにより、ERMはリスク低減だけでなく、機会創出や意思決定の質向上といった価値貢献を最大化できます。

ERM継続的運用の主要な構成要素

ERMを継続的に運用していくためには、いくつかの主要なプロセスが円滑に機能する必要があります。

ERM改善サイクルの回し方:PDCAの活用

ERMを単なる運用に留めず、継続的に改善し進化させていくためには、明確な改善サイクルを確立することが効果的です。ここでは一般的なPDCAサイクルをERMに適用する考え方を示します。

このサイクルを組織の状況に合わせて柔軟に適用し、定期的に回していくことが、ERMを陳腐化させず、常に最新の経営環境に対応できる状態に保つ鍵となります。

継続的改善を成功させるための鍵

ERMの継続的な運用と改善を効果的に進めるためには、いくつかの重要な要素が存在します。

ERM運用・改善がもたらす企業価値向上への貢献

ERMの継続的な運用と改善は、単にリスクを管理するだけでなく、企業の成長と企業価値の向上に多角的に貢献します。

まとめ:ERMを「進化し続ける力」として捉える

ERMは一度構築すれば完了するプロジェクトではなく、企業の成長とともに進化し続ける生きた経営機能です。経営企画部門の責任者として、ERM体制を構築した後の「運用」そして「改善」のフェーズに積極的に関与し、その実効性を高めていくことは、企業価値を継続的に向上させる上で極めて重要です。

継続的な運用を通じてリスク環境の変化を捉え、改善サイクルを回すことでERMの仕組み自体を常に最適な状態に保つ。これにより、ERMは単なるリスク回避のコストセンターではなく、不確実な時代においても企業が成長し、価値を創造し続けるための強力な推進力となるのです。この「進化し続けるERM」の実現こそが、リスクを真に価値に変える道筋と言えるでしょう。